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Sibamuraさんの |
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| 「第1章」 |
「神の背の上で繰り返される争い。 流される血。 ゆっくりと、この大地を闇に染め上げていく。 神は知らない。 生まれ出し子らに、悪魔の血が混じっている事を。 神が浴びた悪魔の返り血。 それが、大地に混じっている。 この地に住む生きとし生ける者は、神の恩恵と、悪魔の呪いを 同時に受け、ゆっくりと狂っていく。 それゆえに、神の名を唱えながら人は殺し合うのだ。」 芝村は、執筆の手を休めた。 ガディウスの事を書き始めると、陰気なことしか書くことがない。 いずれは、図書館に納められるべき書物。 記録者として芝村がある以上、芝村を継いだ時点でこうなる事は わかりきっていたというのに。 先代がうらやましい、そう思う。 どこかのトリックスターが仕掛けた罠に、この世界がはまってし まうまでは、長きにわたり平穏を享受していたのだから。 「神に祝福された者が争うのは、神魔戦争の折りに神が浴びた悪魔の 返り血のせいではないか?」 これは、芝村という一族が行き着いた一つの解であった。 しかし、長き平和の果てに悪魔の血は薄れ、この大地は真の神の地 となる。 これが先代の遺した絶筆。 しかし、世界はそれをゆるさなかった。 別種族、同種族同士でも殺し合う暗黒の世紀への突入。 あまりにも闇に閉ざされた未来。 だからだろうか、あの傭兵ギルドに加入したのは… この世界でギルドといえば、職業支援を行うギルドと、あとは 傭兵ギルドだ。 世界に魔物が湧きだした時より、ガディウスの民は剣を取らざるを えなかった。 そんな中、魔物を狩る仲間同士が集ったのがギルドの始まり。 戦士、魔法使い等、職業毎に特化したギルドと、 魔物狩りの単位としてのギルド。 この2つの形態のギルドで、ガディウスの平穏は護られてきた。 この国では、いま、敵を殺せ、罪人を潰せ、と声高に訴えている。 そんな中、敵を、罪人を殺すなと明言し、体現したギルドがあった。 それが、このギルド。 もう一度、この世界が光に包まれた時に、恥じぬことがない、 そんな生き方ができそうだった。 記録者たる芝村が剣をとったのは、そんな心地良い連中と共に 歩きたかったからかもしれない。 羽根ペンのペン先を拭き、インク壺のふたを閉める。 さて、今日も冒険だ。 |
| 「第2章」 |
「迅速に、的確に敵の横に付く!」 オクタの叱責が飛ぶ。 訓練所を出た後は、スパルタだった。 オクタ…無論、愛称だ。本名はオクタヴィアヌスという。 オクタとは、同じ聖職ギルドに属していた。 まあ、私の方は執筆の為に教会の資料をつかう為だけに所属していたような ものだが。 せいぜいが護身用の聖弾しか学習しておらず、治癒も使えない。 オクタの方は私と違い、人の救済の為に聖職に就いている。 今は、同じく人を救うため魔術師として魔物を狩っている。 一方の私と言えば、芝村としての務め、記録者として世界 の変遷を綴っていた。 だが、悪魔襲来により、1編の歌とともに伝えられる芝村 としてのもう一つの使命、 「剣を取り魔を払う」 為、戦士として魔物と戦うこととなった。 先に冒険者となったオクタに指導を頼み、サンティホール 盆地で魔物を狩っているが、けっこうスパルタだ。 オクタは、そもそも戦士の家系であるため、戦士としての 技能もあり、指導者としてはもってこいだと思ったのだが…。 「動作は確実に!ミスをすれば誤爆で味方にころされるぞ!」 執筆という、肉体労働とはかけ離れた職業を生業としていた 為、容赦を知らぬ特訓に体中が悲鳴を上げる。 しかし、冒険者となるための最短距離を走る事は、この私 自身が望んだことであり、弱音は吐かない。 口にするのは、芝村が剣を持つときに歌えと伝わる1編の歌、 突撃行軍歌のみ。 過去、魔物がこの大地に出現した際、芝村はこの歌を口ずさみ ながら、人々の先頭で戦った。 盾を構え、剣の柄を握りしめ、血で滑る手で魔物を狩る。 それは、盆地の敵を一人で狩れるまで続けられた。 「よし、これだけ鍛えれば大丈夫だろ」 オクタが太鼓判を押す。 これで盆地は卒業し、サイエフ平原にケンタウロスを狩りに いくのだ。 オクタは、巡礼の為にしばらく冒険者を休業する。 名ばかりの聖職者である私とはえらい違いだ。 「たぶん、巡礼から帰ってくるころには技量は抜かれてるな」 オクタの愚痴に、私は苦笑するだけだった。 |
| 「第3章」 |
鬱蒼とした森の一角に、ぽかりと空いた草原。 そこで、息を潜め、敵を待つ。 ギルドの中堅メンバーと、このサイエフで狩りをしている。 この森に出るレベルの魔物は、まだ単独で狩れるレベルにはほど遠い。 そこでギルドでメンバーを集い、森から魔物を駆逐する為にパーティで狩るのだ。 ただ、この呪われた地では、たとえ全ての魔物を駆逐したとしても、すぐにまた湧き出す。 恒久的な平和など求めるべくもない。 ただ、つかのまの平穏でももたらせればそれで充分だ。 狩りのリーダーは、シュカという無口な男だった。 腕にパタを装備し、チェーンメイルに身を包んでいた。 「芝村、剣の技能は?」 「先日、Lv7の称号を受けた」 「…低いな」 狩りの前の会話は、これだけだった。 他のメンバーは、ギルドでは古株に当たるうさびがいた。 なかなか技量が伸びず、苦しんでいた。 来た。 茂みの中から、牛頭の巨体が現れた。 素早く陣形を整え、ミノタウロスを囲む。 パーティでの狩りに慣れていない私が、一歩出遅れる。 「はやく、囲んで!」 一人で攻撃を受けていたうさびが叫ぶ。 「すまん、遅れた」 横からファルシオンで狙うも、外す。 囲んでしまえば、攻撃は人数で分散される。 ミノタウロスならば、よほどの事がない限り負けることはない。 ミノタウロスを狩り、トロルを狩った。 トロルの復元能力には苦労したものの、狩れない敵ではない。 グリフォンが悠然と空を舞っている。 こちらに気が付き、一気に降下してくる。 シュカがうまく誘い込み、私とうさびが一気に囲む。 後は総掛かりで狩るのみだ。 途中まではうまくいっていた。 このまま終わると、だれもが思っていた。 グリフォンの鉤爪が、私の肩にかかった。 丁度、鎧の隙間に差し込まれる。 やられた、と思う間もなく、鎖骨ごと一気に肺を引き裂かれた。 視界が暗黒で閉ざされ、ただ体から血が噴き出す感覚のみが感じられる。 集団での狩りは、一人でも脱落者が出れば、一気に危険度が増す。 すまない…そう、思うのを最後に意識が暗転する。 …す、と意識がもどる。 傷口を見れば、鎧はむごいことになっているが、傷一つ負っていない。 「大丈夫か」 シュカが云った。 復活の薬か。 破損した鎧に鎧油を使いながら、思った。 鎧油の掛かった部分から、元素方程式による使役精霊が喚起され、鎧を復元していく。 復活の薬も原理は油と同じ。アルケミスト達が編み出した薬剤による元素方程式により、使役精霊喚起術式が起動し、対象物をあるべき姿へと復元していく。 ただ、復活の薬は人間の基礎情報を薬剤使用者の情報から導き出しているので、違う人種には使えないという弊害もある。 狩りは、私の抜けた穴が原因で瓦解していた。 ふがいなさに歯噛みする。 …わたしの無事を確認したシュカが、ふいと暴れ続けるグリフォンに向かう。 シュカは、すっと間合いを詰めたかとおもうと、 殴った、 殴った、 殴った、 殴った、 殴った。 その乱打はグリフォンが絶命するまで続いた。 ダメージの残る体でシュカに近づき、癒えきってない声帯で言葉を紡ぐ。 「…感謝を。」 「うい」 無口な漢だった。 |